当院の内視鏡検査実績/がん発見率~2012年11月現在~

2012年12月12日

ようやくですが当院の内視鏡検査実績がまとまりましたので公表したいと思います。

内視鏡検査件数 2,657件 (2010年10月1日開院から2012年11月30日現在)

胃内視鏡 1,807件    大腸内視鏡 850件

消化器専門クリニックとしてはとび抜けて多いとは言えませんが一人クリニックとしてはかなり頑張っているほうではないかと思います。件数はさておき当院での検査を希望されて来られた患者さんすべて自分で検査が行えたことは誇りでもあります。

内視鏡検査の最大の目標はがんの発見、それも早期発見です。では実際にどれほどのがんを見つけることが出来たのでしょうか。

胃がん(GIST1例を含む)  34例 / 1807件 (1.88%)

うち早期胃がんは25例 (1.38%)となります。また胃がんではありませんが前癌病変である胃腺腫も10例12病変見つけることが出来ました。消化器専門の病院やクリニックでもがんの発見率が1%を超えるところはそれほど多くありません。2009年胃癌学会で東京医科大学病院内視鏡センターの河合隆先生が発表された同センター2005年1月から2007年12月までにおける早期胃がん発見率は経鼻内視鏡検査で1170人中14人(1.28%)と、経口内視鏡検査では1万3867人中167人(1.20%)とのことでした。そのころよりさらに内視鏡機器も進歩している(特に経鼻内視鏡は)ので単純に比較はできませんが当院の発見率も遜色のないものと考えております。河合先生のご発表のポイントは早期がんの発見率ではなく、経鼻と経口内視鏡で発見率に差はみられなかったということなのですが。

早期胃がんや胃腺腫は内視鏡治療の適応となることが多いのですが早期胃がんのうち7例は印環細胞癌の患者さんでした。

印環細胞癌は悪性度の高いスキルス胃がんなどのみられる組織型で、胃粘膜の下を這うように拡がっていき、早い時期に胃の外側から腹腔内に散らばるため発見が遅れると完治が難しいと言われています。内視鏡でも早期発見が難しいがんと言われていますが7人の患者さんも無事に手術を受けられました。

続いて大腸がんの患者さんですが

大腸がん(直腸カルチノイド1例を含む)  25例 / 850件 (2.94%) 

うち早期大腸がんは23例と9割以上でした。また大腸ポリープの多くは腺腫という良性腫瘍性病変です。前癌病変でもあるのですが特に異型度(細胞や腺管構造のいびつさ)が強い高度異型腺腫は癌化のリスクもあり内視鏡的な切除の対象となります。当院で見つけた高度異型腺腫は51例59病変(6.0%)でした。当院では開院時より分光画像(FICE)を導入し、拡大内視鏡観察と組み合わせることで病変の悪性度を推測することが可能となります。早期大腸がんや高度異型腺腫などに対しては積極的に内視鏡的切除行っています。もちろん切除後入院での経過観察が望ましい大きな病変に関しては入院施設のある病院へご紹介しています。

当院ではこれまでに850人中143人の患者さんに対して内視鏡的にポリープ切除を行いましたが、早期大腸がん22例中8例、高度異型腺腫51例中39例は当院にて切除を行いました。中でも早期大腸がんの2例はde novo癌(デノボがんと読みます)と言われる癌でした。

大腸がんには多段階発癌と言ってポリープすなわち腺腫が少しずつ大きくなり異型度が高くなることで癌化していくものとde novo癌といって最初から癌として出てくるものがあると言われています。多くの場合は多段階発癌の場合が多いようですが、de novo癌は小さくとも癌であるため早い時期に粘膜の深いところに入り込んでしまい内視鏡的切除が困難になることも多いため、内視鏡医は常にde novo癌を念頭に置いて検査を行う必要があります。この二人の患者さんについては早期発見であったため当院での内視鏡的切除が可能でした。

また大腸ポリープと言われる中で側方発育型腫瘍(LST)と呼ばれる病変があります。ポリープは一般的に上方に発育し大きくなっていきます。だんだん丈が高くなっていくのですがどれほど大きくてもポリープの首の部分が細ければ切除は比較的容易です。それに対してLSTは横方向に拡がっていくため丈が低く意外と発見が困難なこともあります。組織型は様々でがんや腺腫の場合が多いのですが過形成などの良性のものあります。当院でもこれまでに19例のLSTを見つけています。これらを内視鏡的に切除する場合は入院が必要となりますので病院にご紹介し切除していただきました。組織の結果が当院にご報告いただいていない症例もありますが少なくとも5例は大腸がんでした。とくにLSTのなかでも非顆粒型偽陥凹型病変(LST-NG-PD)は内視鏡的治療が困難なことが多く、最近行われるようになった内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の良い適応と言われています。19例中4例がLST-NG-PDで2例はがん病変でした(残り2例は残念ながら紹介先の病院から結果未着です)。

話がかなり細かくなってしまいましたがこのように検査を考察することは大切であり、筑波メディカルセンター病院勤務時もよく検査・治療実績をまとめたものです。そうすることで常に早期胃がんやde novo癌、LST病変など見つけようとする内視鏡医の眼を持ち続けることが出来るのではないかと思うからです。

今回は内視鏡検査についてでしたが実は腹部エコー検査も同期間に859件施行しておりました。これは内視鏡専門医としてではなく肝臓専門医としての日々の診療の結果ということでしょうか。

今後もさらに精進していきたいものです。

 

 

 

 

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